フェンネル (セリ科) 和名 ウイキョウ
【効き目】
消化機能亢進、駆風、去痰、お腹の張り、疝痛、上気道カタルなど
フェンネルは地中海沿岸を中心に世界各地で育生し、料理やメディカルハーブに用いられます。中世ヨーロッパの聖ヒルデガルトが薬草ブレンド茶として活用しており、重く感じる胃腸の働きを助け、お腹にたまったガスを排出します。また、ドイツの小児科ではフェンネルシロップやフェンネルハニーが、風邪の症状の緩和のため処方されています。フェンネルはセリ科ウイキョウ属の多年草植物で、ハーブの一種です。原産地は地中海沿岸から西アジアにかけてです。日当たりさえよければどこでも育つといわれています。草丈1~2mにもなる大型のハーブで、鳥の羽のように広がった糸状の細い葉と傘を開いたような形に咲く黄色い小花が特徴です。葉・茎・種子すべてを利用することができ、特に葉は薬用に、茎は野菜として食用に、種子は香辛料として多く利用されます。株の根元が白く肥大するフローレンスフェンネルは、変種で肥大部分を野菜として利用します。また、葉が赤銅色になるブロンズフェンネルなどの種類があります。一般的に芳香成分として、フェンチン、アネトール、エストラゴールを含み、その他にペトロセニン酸、オレイン酸、リノール酸 、フラボノイド (ルチンなど) 、ビタミン類、ミネラルなどが含まれています。
フェンネルの歴史
フェンネルは、古代ローマで強壮用の食物として用いられていました。ヨーロッパでは古くから薬草として人々の生活の中で欠かせないハーブで、「フェンネルを見ても摘もうとしない者は悪魔だ」という言葉があるほどでした。盛んに用いられるようになったのは中世以降で、特にフェンネルの種子は目に良く、若返りの効果もあると信じられていました。そのため、当時は煎液を洗眼用に使ったり、浴剤としてふんだんに使ったりしていたといわれています。また、家庭の常備薬のように消化促進、咳止めなどにも使用されていたという記録も残っています。中国では諸説ありますが、フェンネルの全草に強い芳香があるため「香りを回らす」という意味で茴香(ウイキョウ)と呼ばれ、ブレンドスパイスの五香(ウーシャン)や漢方薬にも用いられています。日本にも古い時代に中国から伝来し、薬用として利用されてきました。
フェンネルの利用法
香辛料
フェンネルの持つ独特の芳香は魚の生臭さや脂っぽさを消す効果があります。そのためヨーロッパでは「魚のハーブ」と呼ばれています。また、乾燥させた種子はアニスに似たすっきりとした甘さとぴりっとした風味があり、フェンネルは魚の香草焼きに欠かせないハーブとなっています。イタリアでは、パンを焼くときにフェンネルの葉をパン種の下に敷いて風味づけとして使います。他にも、ソースやスープ、若葉はオリーブ油やお酢に漬け込んで調味料としても使われています。フェンネルの種子はカレー粉の主原料のひとつで、そのまま、または砕いてパンやクッキー、ピクルスの風味づけとしてよく利用されています。
ブーケガルニには欠かせないフェンネル
ブーケガルニとはフランス語で「香草の束」のことです。魚のスープをとるときに臭み消しとして、数種類のハーブを入れて使います。各地方により中に入るハーブはまちまちですが、フェンネルはこの中に欠かせないハーブです。フランスの魚料理のブイヤベースにも使用されます。
ハーブティー
フェンネルの種子はハーブティーとしてもよく利用されます。フェンネルの持つ甘みとスパイシーな香りは食欲を抑える働きがあります。フェンネルの芳香成分であるフェンチンが多いといわれています。またフェンネルには、炎症を鎮める効果もあり、風邪などを引いたときにフェンネルのハーブティーを飲むと早期回復が期待できます。ハーブティーとして利用する場合、浸出時間は少し長めにすることがポイントです。
エッセンシャルオイル
フェンネルはエッセンシャルオイルとしても強い薬効があります。はちみつと一緒にお湯に溶かし、咳止めの薬として利用されています。関節炎やリウマチの患部に塗ることで炎症を鎮めるといった効果も期待できます。
野菜
フローレンスフェンネルの肥大した根元はセロリに似ており、生のまま、または茹でたものをサラダとして食べるのが一般的です。また、煮込むことで甘さが繊細になるのでスープや煮込み料理にもよく合います。
フェンネルを摂取する際の注意点
授乳期に摂取すると、母乳の出をよくすることが知られていますが、同時に子宮を刺激するともいわれているので妊娠中は摂取しすぎないよう気を付ける必要があります。また、にんじん、セロリ、ヨモギ、セリ科の植物にアレルギーのある人は、フェンネルにもアレルギーが起こる可能性があるので摂取には注意が必要です。
フェンネルの効果
ダイエット効果・腸内環境を整える効果
フェンネルは特にダイエット効果で古くから注目されていました。フェンネルはギリシャ語で「マラスロン」といいます。これは「やせる」という意味の言葉から派生したといわれています。フェンネルには利尿作用と発汗作用があり、さらに便秘を解消し、お腹に溜まったガスを排出する作用があります。これにより、肥満の原因となる体内の余分な水分や老廃物を排出する効果が期待できます。また、フェンネルの香りには食欲を抑える働きもあることから、古代の女性からダイエットの目的で親しまれてきました。
胃の健康を保つ効果
フェンネルには消化を促す作用があります。消化酵素の分泌を刺激して、消化を促す効果があるため、胃もたれの予防効果が期待できます。冷えによる胃の痛みや消化不良、おなかの張りなどの症状に効果があります。
炎症や痛みを抑制する効果
フェンネルのエッセンシャルオイルは咳止めの薬として使われてきました。また、関節痛の緩和にも効果があるとされています。乳児仙痛発作の既往歴がある乳児121名 を対象とした試験では、0.1%フェンネル種子油(5~20mℓ)を1日4回、7日間摂取させたところ、疝痛(せんつう)が軽減したという報告があります。
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※商品サイト
※参考文献一覧
すすきちえこ、はじめてのハーブ手帖、メディアパル、
2020、p95
わかさの秘密
https://himitsu.wakasa.jp/contents/fennel/