ネロリ         (ミカン科)

アロマ

ネロリ         (ミカン科)和名 (オレンジフラワー)

効き目
鎮痛、抗うつ、不眠、不安、消化器系の不良、気分の落ち込み、興奮からの鎮静など

ビターオレンジの花またはつぼみをネロリと言います。17世紀イタリアのネロラ公国公妃アンナ・マリアが皮の手袋の匂いを消すためにエッセンシャルオイルを用いたことから「ネロリ」という名前で広まりました。エッセンシャルオイルは心のバランスを取り戻す作用を持ち、美容にも役立つことから女性に人気です。気疲れを含む疲労や、心の不安定さが蓄積されたときに解放し落ち着かせてくれます。神経の高揚からくる不眠にも効果が期待でき、鬱や緊張、不安を和らげリラックスさせると同時に、沈み込んだ気持ちを持ち上げるような作用があります。また、細胞のサイクルを促すので、肌の衰えを回復させる効果があり、美容面でも人気です。エッセンシャルオイルを採取する際に一緒にとれる芳香蒸留水も、大変人気があります。ドライをハーブティーにすれば、子供でも飲むことができます。落ち着きを取り戻すハーブティーとして、ヨーロッパではリンデンとよくブレンドされています。

※ポイント 
ネロリのエッセンシャルオイルはオレンジフラワーから抽出されますが、果皮を絞るとビターオレンジ、葉や茎から抽出されるとプチグレンと名前が変わります。

ネロリの成分と効果・効能

香りの特徴
ネロリの香りは、甘さの中にやや苦味を感じる、フローラルで優雅な印象です。原料がビターオレンジの花ということもあり、柑橘系の爽やかさも感じられます。
中程度の強さの濃厚なフローラル系の香りを持っていることから、香水の原料としても用いられています。

ネロリの主要成分

ネロリには下記のような成分が含まれています。
・リナロール
ラベンダーやベルガモットなどにも含まれる芳香成分。抗菌作用、鎮静作用を持つ。
・ネロール
バラに含まれる香気成分。皮膚弾力回復作用を持つ。
・シトロネラール
ユーカリ・シトリオドラ(レモンユーカリ)に含まれる成分。殺菌作用、鎮痛作用を持つ。
・酢酸リナリル
ラベンダーに主に含まれる成分。鎮痛作用、鎮静作用を持つ。
・ネリルアセテート
レモンバームやプチグレンにも含まれている成分。鎮静作用、鎮痛作用を持つ。
・ゲラニルアセテート
バラにも含まれるシトラス系のフルーティな香り成分。抗炎症作用を持つ。
・d-リモネン
レモンなどの柑橘系果皮に含まれる成分。洗浄力、抗菌作用を持つ。
・α-ピネン
松脂やヒノキの香りと同じ成分。リラックス効果や食欲増進効果がある。
・β-ピネン
ローズマリーやレモンなどに含まれる香り成分。抗菌作用、抗炎症作用などがある。
・α-テルピネン
レモンの香り成分。抗酸化作用がある。
・γ-テルピネン
森林の香り。抗菌、抗炎症作用がある。

ネロリの香りに奥深い味わいを感じられるのは、これらの多様な成分を含んでいるためです。
上記の他にも、ビタミンCの1種である2-エチルフランや防腐効果のあるカンフェンなども含み、ネロリの成分は50種類以上と多岐に渡っているため、沈痛・沈静作用やリラックス作用、食欲増進、抗炎症作用、抗酸化作用など、幅広い効果・効能が期待できます。

ネロリの効果と効能

ネロリの効果や効能は、大きく“心”“身体”“肌”それぞれへの効果に分けられます。

■心・メンタル面への効果
ネロリは「天然の精神安定剤」といわれているほど、心に強く働きかける香りで、特にリラックス効果に優れています。ネロリの優しい香りがストレスなどで落ち込んだ感情を包み込んで気持ちを明るく前向きにし、不安やうつ状態を和らげて心を安定させてくれます。神経系の様々な症状に有効で、ネロリに含まれる「酢酸リナリル」という成分には交感神経系の興奮を鎮める作用があることから、自律神経の乱れからくる不眠症や動悸などの精神的な不調の改善にも役立つと考えられています。ネロリは子供にも使える安全性の高い精油なので、寝付きの悪いお子さんのケアや、受験や学業などのストレスのケアとしても活用できます。大体どの精油からでもアロマによるリラックス効果は得られますが、ネロリが持つリラックス効果はその中でもトップクラスと言って良いほどです。逆に、緊張感が求められる車の運転や精密機器の操作中には不向きですので、使用には注意が必要です。

■身体・健康面への効果
ネロリは北アフリカでは昔から家庭の胃腸薬としても使われてきました。
ネロリに含まれているリナロールや酢酸リナリルなどの成分は、交感神経系を鎮静させて自律神経のバランスを整える働きが期待されていて、神経・精神面に起因する不調全般を軽減するのに役立つと考えられています。特に酢酸リナリルは神経の興奮を鎮める作用があることから、神経痛を和らげ、心臓の動悸を沈め、頭痛やめまいの治療にも有効と言われています。神経系全般を調整し、腸に対しての鎮静作用もあるので、ストレス性の便秘や下痢、胃腸の働きの不調を和らげ、消化不良や腹痛、胃痙攣などにも作用します。また、リモネンには血行を促進させて消化機能を整える働きがあるので、食欲を増進したり消化機能をサポートする効果があると考えられています。

■肌・美容面への効果
ネロリは肌への刺激が少なく、保湿効果もあるため、敏感肌や乾燥肌などのどんな肌タイプにも使うことができ、トラブルの改善に役立ちます。皮膚の新陳代謝を促して細胞の生まれ変わりを助け、肌の弾力性を取り戻し、シミやシワ、たるみも予防できるので、アンチエイジング効果が期待できます。肌のターンオーバーを正常化させたい時にも効果的です。また、毛細血管の破れや傷跡などを修復する働きがあり、肌を柔らかくする効果もあるため、妊娠線の予防やケアにも最適ですよ。キャリアオイルで希釈して、使用する前にパッチテストをしてから、お肌のケアに役立ててくださいね。

女性に嬉しいネロリの効果
ネロリに含まれる「ネロリドール」という成分には、女性ホルモンと似た働きがあると言われ、女性ホルモンのバランスを整える働きがあります。生理不順や重い生理痛、月経前症候群(PMS)や更年期障害による身体の辛い症状にも効果があり、血行促進作用もあるため、女性に多い冷えやむくみといった血行不良による悩みにも効果的です。イライラや気分の落ち込み、涙もろくなるなどといった心の症状を和らげる効果もあるので、女性特有の精神的な不安定さの改善に役立ちます。また、ネロリを使ってバストマッサージをすると、ネロリドールの働きでバストアップの効果が得られるとも言われ、より女性らしいボディラインを手に入れるために役立ちますよ。ネロリには催淫作用があると言われていますが、これはイランイランやジャスミンなどのような男女生殖器の強壮作用ではなく、不安やストレスを鎮める作用によって自分に自身を持ち、精神面からくる性的障害の解消に効果的という理由からそう言われているようです。性的な興奮を促す、いわゆるモテる香りとは違うので、自分に自身をつける香りとしてご活用ください。ネロリは甘すぎないフローラル系で、上品さを感じる使いやすい香りですが、香りが強いので、大量に使い過ぎると吐き気や頭痛を起こすことがあります。また、鎮静効果が強いため、使用中に頭がぼんやりするように感じることがあるので、使い過ぎにはくれぐれも注意してくださいね。

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※参考文献一覧
すすきちえこ、はじめてのハーブ手帖、メディアパル、2020、p23
Felice-kaori
https://felice-kaori.com/article/14495

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