ぶどう  【葡萄】

果実

ぶどう      【葡萄】


【効き目】
疲労、倦怠感、食欲不振、むくみ、肌荒れ、夏バテなど

口やのどの渇きを癒します。水分代謝を促進してむくみの改善にも有効です。血栓を予防するケルセチンが豊富に含まれています。同じくエネルギーを補給するさつまいもとの組み合わせで煮物などに。ぶどうは、ブドウ科ブドウ属に属する、ツル性の落葉低木植物です。現在、世界で最も多い生産量を誇る果物のひとつといわれています。8月から10月初旬頃に旬を迎えるぶどうは、秋を代表する果物としてよく知られています。日本での主な生産地は、甲州ぶどうで知られている山梨県や長野県、山形県です。ぶどうはそのまま食べられる他、レーズンやジュース、ワイン、ぶどう酒などに加工され広く親しまれています。

〜豆知識〜ぶどうの木の花言葉
ぶどうからつくられるぶどう酒は、世界最古のお酒であるといわれています。ぶどうの房を潰して容器に入れておくだけで、果皮に存在する菌の力により簡単に発酵させることができます。そのため、ぶどうの木の花言葉はイギリスでは「陶酔」、フランスでは「忘却」「情熱の陶酔」など、その多くがお酒に関わった言葉になっています。

ぶどうの名前の由来
ぶどうの名前の語源はあまりよく分かっていませんでしたが、大宛国(現在のウズベキスタンのカラキルギジスタン地方)でぶどう酒の意味を持つ「ブダウ」が、中国で「プタオ」と呼ばれるようになり、日本語で「ぶどう」と呼ばれるようになったという説が有力になりつつあります。

ぶどうの歴史
ぶどうは1億4300~6500万年前には出現していたとされる世界最古の果物のひとつで、古代エジプトの壁画などにも描かれています。「ぶどう発祥の地」といわれるコーカサス地方にあるグルジアでは、5000年以上も昔からワインづくりが行われていました。クレオパトラも愛したといわれるグルジアワインは、「クレオパトラの涙」とも呼ばれ、他の国では見られない個性豊かなワインだったといわれます。しかし、当時はその多くが地元の人々によって消費されていました。日本には古くから山ぶどうが自生していましたが、他国のぶどうは奈良時代にシルクロードを経て伝わってきたといわれています。鎌倉時代初期にはすでに山梨県で甲州ぶどうと呼ばれる品種が栽培されていました。明治時代に入ると欧米から多数の品種が導入され、ヨーロッパブドウとアメリカブドウを交配させたデラウェアなどが本格的に栽培されるようになりました。現在では改良が進み、多数の品種が誕生しています。

ぶどうの品種
ぶどうの品種はとても多く、世界には1万種以上も存在するといわれています。このうち日本では30~40種類のぶどうが栽培されています。未熟なぶどうの果皮は緑色をしていますが、熟すにつれて果皮の色は変化し「黒」、「赤」、「緑」の3つの色に分かれていきます。黒は巨峰やピオーネ、赤は甲斐路や安芸クイーン、緑はマスカット・オブ・アレキサンドリアなどの品種が有名です。

・巨峰
日本で最も好まれ、最も多くつくられている品種です。国内生産量の約35%を占めています。正式な品種名は「石原センテニアル」といい、石原早生とセンテニアルを交配させてつくられました。開発された研究所から見える雄大な富士山にちなんで、巨峰(商標名)と名付けられました。

・デラウェア
食卓でよく目にするなじみの深い品種のぶどうです。粒が小さめで果汁が多く、種がないことから人気を集めています。オハイオ州デラウェアで発見されたため、デラウェアと名付けられました。

・甲州
原産地である山梨県の甲州地方で古くから栽培されている歴史のある品種です。果皮は薄紫色で、程よい甘酸っぱさを持っています。甲州ワインの原料としても利用されています。

・マスカット・オブ・アレキサンドリア
「ぶどうの女王」とも呼ばれ、贈答用として人気が高い品種です。大粒ですが、果皮が薄いため皮ごと食べることが可能です。芳醇な香りと上品な甘さを持ち、糖度は高いものだと20度にもなります。エジプトが原産で、明治時代初めに日本に導入され、現在では岡山県を中心に栽培が行われています。

〜豆知識〜甲州ぶどうの誕生
甲州ぶどうの誕生に関する説は2つあります。

・行基説
718年、僧の行基が甲斐の国の渓谷で行った修行の最終日、夢の中で左手に宝印、右手にぶどうを持った薬師如来が現れました。 行基はその夢を喜び、すぐに夢の中に現れた姿と同じ薬師如来像を建立し、安置したのが柏尾山大善寺です。以来、行基は法薬としてぶどうの栽培方法を村人に教え、この地でぶどうが栽培されるようになったことが甲州ぶどうの始まりだと一説では考えられています。
現在の薬師如来像の持物は失われていますが、元々は右手にぶどうを持っていたといわれています。

・雨宮勘解由(あめみやかげゆ)説
1186年、雨宮勘解由は祭りの日に山梨県勝沼で山ぶどうの変性種を見つけました。将来有望なぶどうになると確信した雨宮勘解由は、5年もの歳月をかけて改良を続けた結果、30余房の優秀な甲州ぶどうを収穫することに成功しました。その後、村人にも苗を分けて、甲州ぶどうの普及活動を行ったため、甲州ぶどうが栽培されるようになったという説もあります。

ぶどうの選び方・保存方法
美味しいぶどうを選ぶポイントは、茎が太く、粒がポロポロ落ちずに揃っていて、皮にハリがあることです。ぶどうの粒の表面には、ブルームと呼ばれる白い粉ついています。これは病気や乾燥からぶどう自身が身(実)を守るために出すものです。ブルームがきれいについていることは、より新鮮なぶどうであるという証です。ぶどうは上側程甘みが強いため、下側から食べると最後までおいしく食べることができます。保存する場合は、袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。水に浸すと傷みやすくなるため、食べる直前に洗うようにします。

ぶどうに含まれる成分と性質
ぶどうに多く含まれる糖質はブドウ糖と果糖で占められており、これらの含有量は果物の中でもトップクラスを誇ります。ぶどうの果皮や種子には、アントシアニンやレスベラトロール、タンニンなどのポリフェノールが豊富に含まれています。レスベラトロールは「若返りの成分」とも呼ばれ注目を集めており、ぶどうの中でもデラウェア種に多く存在するといわれています。ポリフェノールは、強い抗酸化力を持っていることで知られています。抗酸化作用とは、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素を除去し、体が酸化することを防ぐ働きのことです。例えば、クギを放置し空気中にさらしておくとクギがサビついてしまいます。これが酸化です。人間の体内で酸化が起こると、病気や老化、肌トラブルが引き起こされます。ぶどうに含まれるこれらのポリフェノールが体内で強い抗酸化力を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルが予防されます。

ブドウの効果


視機能を改善する効果
ぶどうには、アントシアニンが豊富に含まれています。人は物を見る時、まず目に入ってきた映像を目の網膜に映し出します。網膜にはロドプシンと呼ばれるたんぱく質が存在し、そのロドプシンが分解されることにより発生する電気信号が脳に伝わり、「目が見える」と感じます。分解されたロドプシンは再合成され、再び分解されるという流れを繰り返しますが、疲れや加齢によりロドプシンの再合成能力は低下します。アントシアニンにはこのロドプシンの再合成を助ける働きがあるため、年齢や目の疲れによるショボつきやかすみ、ぼやけなどを予防・改善する効果があります。また、アントシアニンには目の周りの血流を改善し、眼精疲労を改善する効果があります。

生活習慣病の予防・改善効果
血液中の悪玉(LDL)コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭めるため、高血圧や動脈硬化などが引き起こされます。ポリフェノールや有機酸、ブドウ種子油に含まれるリノール酸やオレイン酸をはじめとする様々な成分には、血中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きがあります。さらに、ぶどうに含まれるカリウムには、血圧の上昇を抑える働きがあります。そのため、これらの成分が豊富に含まれているぶどうには、高血圧を防ぎ、動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果があると考えられています。
また血糖値上昇を抑制する働きも報告されており、糖尿病予防効果も期待されています。また、アントシアニンには内臓脂肪の蓄積を抑え、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)を予防する効果があることも明らかになり、注目を集めています。

老化を防ぐ効果
人間の体は約60兆個もの細胞からできており、それらの細胞が日々生まれ変わりを続けることで若々しさが維持されています。しかし、加齢とともに細胞の生まれ変わりのスピードが遅くなったり、新しく生まれた細胞の質が低下してしまうと、老化が引き起こされます。ぶどうに含まれるレスベラトロールには、細胞の生まれ変わりを正常に保ったり、細胞の質の低下を防ぐ働きがあるため、老化を防ぐ効果が期待されています。さらに、タンニンやブドウ種子油に多く含まれるプロアントシアニジンなどには、皮膚細胞の酸化を抑制し肌のシミやしわ、そばかすなどを防止する働きもあるため、ぶどうには美肌効果もあると考えられています。

疲労回復効果
ぶどうには、体内に吸収されやすい単糖類であるブドウ糖や果糖が豊富に含まれています。ブドウ糖や果糖は摂取後、体内で素早くエネルギーに変換されるため、即効性のある優れたエネルギー源になると考えられています。さらに、有機酸には疲労物質である乳酸を分解しエネルギーに変える働きがあるため、疲労の蓄積が抑えられます。そのため、これらの成分が豊富に含まれるぶどうは、疲労回復に高い効果を発揮するといわれています。

下痢を予防する効果
ぶどうに含まれるタンニンには、強い殺菌作用により腸内の悪玉菌[※4]を減少させる働きがあります。そのため、悪玉菌が原因となって起こる下痢を予防する効果が期待できます。

むくみを予防・改善する効果
ぶどうは漢方として尿の排出を促し、肝機能や腎機能を高め、むくみを解消する働きがあるとされています。ぶどうに含まれるカリウムにも、体内の余分な水分を排出する働きがあるため、ぶどうには細胞間に溜まる水分が原因で起こるむくみの予防・改善に効果を発揮するといわれています。

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※参考文献一覧
薬膳と漢方の食材小事典
2019、日本文芸社 p103
わかさの秘密
https://himitsu.wakasa.jp/contents/grape/

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