クミスクチン    (シソ科)

ハーブ

クミスクチン    (シソ科)

【効き目】
利尿、鎮痙、腎盂炎、膀胱カタル、腎臓カタル、過敏膀胱など

長い雄しべが特徴のクミスクチンには利尿作用があり、腎臓のお茶として知られています。ドイツやフランス、スイスなどでも細菌性の尿路感染症や炎症疾患にて用いられています。代表的な成分のカリウムを豊富に含むので水分の排出を促すだけでなく、ナトリウムや塩素、尿酸の排出も増加させることから、高血圧や痛風対策にも用いられます。クミスクチンはインドネシア語で“髭(Kumis)”と“(kuting)”を意味する言葉を合わせたもので、花から伸びる雄しべや雌しべが猫のヒゲに見えたことから命名されました。この個性的な姿から、観賞用としても人気を集めています。日本でもお茶の場合はそのままクミスクチン茶と呼ばれますが、植物として正式な和名はネコノヒゲで、生薬としても猫髭草(ビョウシュウソウ)と呼ばれることがあるそう。英名のcat’s whiskersも全て現地での呼び名を直訳して命名されたと言われています。クミスクチンの原産地は東南アジアとされており、原産地であるインドネシアなどでは腎臓疾患などによるむくみに対する利尿剤として用いられてきました。中国には“石の入った卵を飲み込んで苦しんだ蛇がこの草を食べ、しばらくするとお腹の石が溶けた”という言い伝えがあるそうで、その逸話にちなんで化石草とも呼ばれているそう。石を溶かすかはさておき、腎臓結石に有効な生薬と考えられていたことがうかがえるエピソードですね。ヨーロッパでも100年以上前からハーブの一種として取り入れられていたようです。またヨーロッパでははインドネシア(ジャワ)の人々がよく飲むお茶、ということで「Java tea(ジャワティー)」とも呼ばれているそうです。余談ですが日本でジャワティーというと大塚製薬さんの『sinvino JAVATEA』が有名ですが、こちらは原材料が紅茶と書かれていますから別物でしょう。沖縄の健康茶というイメージがあるクミスクチン茶ですが、沖縄県で本格的に薬草茶用として栽培されるようになったのは1964年と比較的最近のようです。それ以前にも1930年代に西表島などで栽培が行われていたことはあるそうですが、第二次世界大戦などの影響で中断してしまったのだとか。
2000年前後になると沖縄ブームが起こり、健康志向の高まりと合わせて長寿県沖縄の食材・お茶が注目されるようになります。この影響でクミスクチン茶も健康茶としての認知が高まり、最近ではロズマリン酸を含むことから花粉症対策としても需要が増えているようです。

クミスクチンの栄養・成分・期待できる効果

むくみ予防・軽減に
クミスクチンは古くから利尿作用を持つ薬草として民間医療で用いられてきた存在で、現在でもむくみ改善のサポートとして取り入れられています。クミスクチンはカリウム含有量が高く、ナトリウムの排出促進や利尿作用が期待されています。加えてサポニンにも利尿作用が期待されており、相乗してむくみの軽減に役立つと考えられています。むくみ改善やデトックスサポートとしてはジュニパーやハトムギ茶などと組み合わせるのもオススメです。そのほかクミスクチンはオルソシオニン(オルソシフオニン?オルトシホニン?)という利用作用を持つ成分を含むとする説もありますが、クミスクチン茶関連以外でこの成分についての情報は全くありません。筆者が調べた限りでは組成式や構造式・研究報告の類は見つかりませんでしたので、この信憑性はイマイチと言ったところと考えられます。

腎臓機能のサポートに
カリウムなど利尿作用を多く含むクミスクチン茶は、排尿を促すことで腎臓の働きを活発化し腎臓炎の予防や軽減に役立つと言われています。また尿の排出を促すことで尿道結石の予防に、利用作用とサポニンなどの殺菌・抗菌作用から膀胱炎の予防やケアなどにも効果が期待されています。ただし腎機能が極端に低下している場合や高齢者の摂取は高カリウム血症を引き起こす危険性も指摘されています。そのほか多量に摂取すると低ナトリウム血症を引き起こす可能性も考えられます。茶葉と同じものが生薬として用いられることもある存在ですから、節度ある飲用量を心がけて下さい。

血管・血流サポートに
クミスクチンにはシソなどに含まれているポリフェノールの一種、ロズマリン酸が含まれています。ロズマリン酸は抗酸化作用を持つと考えられている成分のため、血中脂質が酸化してできる過酸化脂質の生成を防ぐこと働きが期待されています。このため過酸化脂質が血管に付着・蓄積して起こる動脈硬化や血栓予防にも役立つと考えられてます。サポニンにも過酸化脂質生成抑制や悪玉コレステロールの低減作用が期待されていますから、相乗して生活習慣病予防にも効果が期待できるでしょう。またスムーズな血液循環をサポートしてくれることう加え、カリウムのナトリウム排出促進作用から高血圧予防にも効果が期待されています。サビつき(酸化)から身体を守ることで体全体のアンチエイジングにも繋がるでしょう。

肥満・糖尿病予防に
クミスクチンにはシソなどに含まれているポリフェノールの一種、ロズマリン酸が含まれています。ロズマリン酸は近年炭水化物の分解の過程で出来る麦芽糖をブドウ糖に分解するのを抑制する働きが報告されており、分解を阻害された麦芽糖は体内に蓄積出来ず排泄されるため、体内の糖分吸収を抑制すると考えられます。糖質の吸収を抑えることは血糖値の急激な上昇を抑えることにも繋がるため、糖尿病予防にも効果が期待されています。またロズマリン酸の働きで余分なブドウ糖が中性脂肪として体内に蓄積されにくくなる=脂肪をつきにくくする働きが期待出来ることからダイエットティーとしてもクミスクチン茶は注目されています。むくみの軽減に役立つのもスタイル維持としては嬉しいですね。肥満予防・糖尿病予防としては食事前後にクミスクチン茶を摂取すると良いと言われています。グァバや烏龍茶などとブレンドして飲まれることも多いようです。

美肌・アンチエイジングに
紫外線やストレス・加齢などによって対処できないほと活性酸素が多量に発生すると肌細胞が酸化され、肌の弾力性が低下することでシワやたるみなどの肌老化現象が起こります。このためロズマリン酸などの抗酸化物質を含むクミスクチン茶は肌のアンチエイジングにも役立つと考えられています。そのほかロズマリン酸の糖質吸収抑制作用から肌のコゲつきと称される糖化予防に良い(抗糖化)、利尿作用によってデトックス効果が期待できることと合わせて肌荒れの改善に良いという説もあります。お肌のサポートとしてはビタミンCが豊富なゴーヤ茶や柿の葉茶などと組み合わせると相乗効果が期待できます。

皮脂分泌抑制について
クミスクチン茶はかつて健康番組で「脂性肌・皮脂のテカり対策に良いお茶」として紹介されたことで話題となり、脂漏性皮膚炎の予防や改善に良いという説もあります。ロズマリン酸などの抗酸化物質によって肌を守る・皮脂の酸化を防ぐなどの働きがあると言われていますが、皮脂分泌に直結するかは定かではありません。またブドウ糖が中性脂肪として体内に蓄積されにくくする働きも関係しているとは言われていますが、中性脂肪の多さが皮脂分泌に直結するのかも微妙なところです。
実際に飲んでみた方のレビューとしても肌のテカリ・ベタつきが減ったという方もいらっしゃれば、全く効果を感じられなかったという方も少なくありません。余計に皮脂が増えるという心配は少ないですが、テカリ肌が治るという可能性も高くないでしょう。大人ニキビの原因として過酸化脂質の存在が挙げられていますから、ニキビ予防には役立ってくれるかもしれません。

免疫機能正常化・アレルギー軽減
抗酸化・肥満予防の他、ロズマリン酸は免疫システムの過剰な作用を抑えてアレルギー症状を抑える作用も報告されています。この働きから天然ステロイド(ステロイド剤に変わる副作用のないアレルギー軽減物質)としての活用が期待されており、健康食品としてもロズマリンを含むシソ(赤紫蘇)やレモンバームなどのハーブの人気が高まっています。クミスクチン茶も同じくロズマリン酸を含むお茶のため、花粉症やぜんそく・アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状の軽減効果が期待されています。またアレルギー炎症はアレルゲン(異物)への反応で起こりますが、免疫細胞が過剰に反応することで活性酸素を産生し免疫機能や正常な細胞を傷つけることが悪化要因だと考えられています。アトピー性皮膚炎であれば活性酸素が脂肪と結合して生成される過酸化脂質、角質層の保湿機能を奪うことで炎症を悪化させるとも言われています。クミスクチンにはサポニン・ロズマリン酸・フラボン類など抗酸化を助けてくれる成分も多いので、活性酸素を抑制することからもアレルギー症状軽減のサポートに役立ってくれるでしょう。

関節炎・リウマチなどの緩和
クミスクチン茶は利尿・腎臓機能活発化などよって、老廃物の排出を促す働きも期待されています。抗酸化物質がスムーズな血流を保持してくれること、ロズマリン酸の抗ヒスタミン作用などと合わせて関節炎やリウマチ・神経痛などの軽減にも取り入れられることがあるそうです。

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※参考文献一覧
すすきちえこ、はじめてのハーブ手帖、メディアパル、
2020、p108
ボタニカル♩ラブ
https://botanicalove.com/kumisukuchin01/

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