ネトル (イラクサ科) 和名 セイヨウイラクサ
【効き目】
浄血、造血、利尿、アレルギー疾患(花粉症、リウマチ、アトピー)、痛風など
ネトルにはクロロフィルが豊富に含まれるため、造血や利尿の作用があります。また、植物性のヒスタミンを含むことから花粉症、アトピー、リウマチの改善にも効果があります。ドイツでは、春先の花粉症シーズンに向けて冬のうちからネトルのハーブティーを飲むという「春季療法」があります。ネトルは味に比較的癖がなく、緑茶に似ています。このことから、ドライで入手したものをハーブティーだけでなく、スープに入れたり、砕いてふりかけにしたりして食べることもできます。食物繊維が豊富に含まれることから腸内環境改善が期待でき、血をきれいにする作用もあるため、体質改善も進みやすくなります。また、カリウムや鉄分、ビタミンC、妊活に欠かせない葉酸も含むので、貧血対策や生理不順の改善にも有効とされています。こうした面から妊婦や授乳婦でも比較的安心して使えるハーブです。その他にも、止血や寿の塗り薬として使われたり、育毛剤として活用されたりします。ネトルはイラクサ科イラクサ属の多年性植物で、成長すると高さは30~50cm程度になります。ネトルの茎や葉の表面にある毛のような細かいトゲは、刺さると焼けるような痛く、皮膚が赤く腫れます。原産地はヨーロッパからアジアにかけてで、全草を民間薬として利用してきました。また、料理や薬用ハーブ、コンパニオンプランツとしても利用されています。日本ではイラクサとして知られており、根、茎、葉のどの部分にも良い成分が含まれています。近年では健康食品の素材としても注目されています。
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ネトルの歴史
ネトルはヨーロッパからアジアにかけてが原産地ですが、強い繁殖力があり現在では世界中に分布しています。ヨーロッパでは2000年以上も前から知られる歴史のあるハーブで、アレルギー症状の緩和などを目的とし、さまざまな症状に用いられてきました。1世紀ごろにはギリシャの医師ディオスコリデスらがネトルの葉に利尿・便通作用があると報告し、それ以外にも幅広い使い方を記しています。また、アメリカでは、南北戦争時に南軍の軍医であったフランシス・フロッシャーが、ネトルの葉と茎の浸出水に浸けた包帯を止血用に用いたとの記録を残しています。ネトルの名前は英語のneedle(針)に由来し、日本では刺草(イラクサ)といわれます。また学名のUrticaは、トゲが刺さった時の焼けるような痛みから、ラテン語のuro(焼く)に由来しています。
ネトルの生産地
ネトルは北アメリカやヨーロッパに多くみられますが、日本では本州の関東以西から九州にかけて分布しています。植え付けの適期は3月~4月で、種をから育てる場合は春から秋に播きます。ネトルは本来森林などに自生しており高温多湿に弱いため、排水性があり風通しの良い場所で栽培します。日本で育てる場合、夏の蒸れに特に注意が必要です。収穫時期は6月~9月にかけてで、葉腋から円錐形に緑色の花をつけます。
ネトルに含まれる成分と性質
ネトルの葉には、β-カロテンやビタミンC、葉酸などのビタミンや、鉄やカルシウム、マグネシウムなどのミネラル、またクロロフィル、フラボノイドなどさまざまな栄養素が含まれます。ネトルはクロロフィルを豊富に含むことから、古くから浄血や造血に用いられてきました。浄血の働きからアトピーや花粉症などのアレルギー疾患に効果があるとされ、ドイツでは春季療法として春先のアレルギーや肌荒れ予防にネトルティーが利用されています。またフラボノイドもアレルギーに良いとされるため、花粉症の季節にはネトルティーが特に多く飲まれます。根には多糖類や植物ステロールが含まれ、良性の前立腺肥大による症状の緩和に用いられます。また、トゲにはアレルギーの原因物質であるヒスタミンやアセチルコリンなどの成分が含まれます。
ネトルの効果
アレルギー症状を緩和する効果
花粉症などのアレルギー症状の原因はヒスタミンという物質です。ヒスタミンが体内で大量に分泌されることでくしゃみや鼻づまり、涙目などを引き起こします。ネトルに含まれるフラボノイドの一種ケルセチンには、ヒスタミンの分泌を抑制し、アレルギー症状を軽減する効果があります。また、ケルセチンにはアレルギー症状を緩和すると同時に、炎症を起こす原因物質であるロイコトリエンの分泌を抑制するため、抗炎症効果も発揮します。ケルセチンの抗ヒスタミン作用には即効性はありませんが、継続して摂取することで体質が改善できるため、花粉症の時期以外でもネトルティーなどを利用して摂取すると有効的です。
貧血を予防する効果
ネトルには鉄が多く含まれますが、一般的に植物性の鉄分は体内への吸収率が低い傾向にあります。しかしネトルには一緒に摂取することで鉄の吸収量を高める、ビタミンCも豊富に含まれています。このことからネトルは効率的に鉄を摂取することができるので、貧血予防に効果的です。また、ネトルにはクロロフィルが多く含まれますが、クロロフィルには鉄と同様の働きを持ちます。ヘモグロビンの中心構造体である血色素のヘムと類似した構造を持つため、造血能力があり、また骨髄を刺激すことで赤血球や白血球の生成を促し血液の状態を良くします。
排尿障害を改善する効果
ネトルの根には多糖類や植物ステロールが含まれます。前立腺は男性特有の臓器で、一般的には年齢を重ねると萎縮してきますが、ホルモンのバランスが崩れることで肥大する場合があります。それによって尿道が圧迫されると、頻尿や残尿感などの症状が現れます。植物ステロールには、前立腺に働きかけて肥大を予防する効果があることから、良性の前立腺肥大による症状の緩和に用いられます。
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※参考文献一覧
すすきちえこ、はじめてのハーブ手帖、メディアパル、
2020、p63
わかさの秘密
https://himitsu.wakasa.jp/contents/nettle/