柿   (カキノキ科)

果実

柿      (カキノキ科)


【効き目】
二日酔い、せき、のどの渇き、むくみ、口内炎など

肺をうるおして乾燥による咳や喉の渇きをとめます。アルコールデヒドロゲナーゼという酵素がアルコール分解を促し二日酔いを改善します。体を冷やす性質が強いので腹痛や下痢を起こしやすい人は胃腸を丈夫にして体を温める干し柿がおすすめです。抗酸化作用があるビタミンCやβ-カロテンが多く含まれます。タンニンと果糖は二日酔いの予防と改善に効果があります。柿とは、カキノキ科カキノキ属に属する果物です。日本古来の植物で、「柿」という字も日本の国字です。甘柿と渋柿があり、日本の風土に根づいた秋の果物として親しまれています。甘柿には、受粉に関係なく渋が抜ける「完全甘柿」と、受粉して種子ができると渋が抜ける「不完全甘柿」があります。渋さを感じる原因は、ポリフェノールの一種で渋み成分でもあるタンニンが口の中で溶けるためです。幼果期は甘柿も渋柿も「可溶性タンニン」を含むため渋みを感じますが、甘柿は成長過程で「不溶性タンニン」に変化するため渋みを感じなくなります。また、干し柿にすると渋みの原因であるこの「タンニン」がほとんど不溶性になるため、渋みが自然に抜けていきます。

〜豆知識〜柿の簡単な渋抜きの方法
渋抜きの方法としては、40~42℃の湯に12~24時間浸漬する「湯抜き」や、30~40%のアルコールをふりかける「アルコール脱渋」などがあります。ご家庭で行う場合は、数か所小さな穴をあけたビニール袋に渋柿5個とりんご1個を入れて口を閉じるという方法が簡単です。りんごから出るエチレンの働きにより、1週間ほどで渋が抜けます。

柿の歴史
柿は日本および中国が原産といわれています。日本には縄文・弥生時代には定着していたようで、「古事記」や「日本書紀」に柿の名前の表記が確認されることから、奈良時代には一般的に食されていたと考えられています。平安時代の法典「延喜式(えんぎしき)」には干し柿がつくられていたとの記録が残されています。

柿の生産地
甘柿は成熟期である秋の気温が充分に高くないと樹上で渋が抜けないため、東海地方以西の暖地で多く栽培されています。主要産地は和歌山県、福岡県、奈良県、岐阜県、愛知県、山形県などです。渋柿は東北地方から九州まで全国的に栽培されています。また干し柿は、長野県、山梨県などから多く出荷されます。海外でも東アジア諸国やアメリカの一部、ブラジル、イタリア、イスラエル、ニュージーランドなどで栽培されています。

柿の旬
品種によって異なりますが、主に9~12月に旬を迎えます。10~11月には最も多くの品種が店頭に並びます。

柿の品種
大きくは甘柿と渋柿に分かれますが、その土地の気候や風土に合わないと育たないことが多いため、その土地固有の品種が多く誕生しました。現在、柿の品種1000以上あるとされていますが、中でも以下の5つは特に生産量が多い品種です。

・富有(ふゆう
市場の半数以上のシェアを占める完全甘柿の代表品種です。岐阜県を生産地とし、1898年に富有と命名されました。
​果皮はオレンジ色で、果実はふっくらと丸みがあります。果肉はやわらかく果汁も豊富で、強い甘みが特徴です。
​10月下旬頃から2月頃にかけて出荷されます。日持ちもよく、主に福岡県や岐阜県などで栽培されています。

・平核無(ひらたねなし)
「種なし柿」としてよく知られている品種で、生食のほか干し柿としてもよく使われます。「庄内柿」や「おけさ柿」とも呼ばれている不完全渋柿ですが、出荷時に渋抜きを行うことで甘くなります。果汁が多く、甘くまろやかな口当たりが人気の品種で、10月中旬~11月頃に出荷されます。主に​山形県や和歌山県などで栽培されています。

・刀根早生(とねわせ)
1980年(昭和55年)に登録された渋柿です。平種無の枝変わりで見かけは平種無と変わりません。他の柿に比べて出荷が早く9月下旬頃から出荷が始まり、主に和歌山県や奈良県で栽培されています。

・甲州百目(こうしゅうひゃくめ)
​釣り鐘の形をした不完全渋柿で、古くから全国各地で栽培されています。
​渋抜きをして生または干し柿として食べられる以外にも、あんぽ柿や枯露柿(ころがき)にも利用されます。別名「富士柿」や「蜂屋柿」ともいわれ、主に宮城県や山梨県で栽培されています。​

・松本早生富有(まつもとわせふゆう)
完全甘柿の富有の枝変わり種です。松本早生は、京都の松本豊氏園で発見・育成したことから名付けられました。味は富有と似ており甘みが多く、果肉もやわらかめです。熟期は富有より早く、11月上旬に熟します。

柿に含まれる成分
柿はビタミンCが豊富な果物で、1個にみかんの2倍のビタミンCが含まれており、1日に必要なビタミンCを補うことができます。ビタミンCには強い抗酸化作用があり、紫外線やストレスなどにより発生する活性酸素を除去し、体の酸化を防ぎます。柿に含まれるビタミンCが体内で強い抗酸化作用を発揮して体を酸化から守ることで、病気や老化、肌トラブルを予防します。さらに、柿はβ-カロテンも豊富で、ビタミンCとの相乗効果でウイルスや細菌に対する抵抗力を強めて粘膜を強化するため、風邪予防や肌荒れ防止に効果的です。また、干し柿にするとビタミンCは減少しますが、実はカロテンは2倍に増加し、食物繊維も豊富になります。
​1回あたりに食べる量の食物繊維の含有量は、実は全食品中で最も多く優れているとされています。ただし、エネルギーが高いため干し柿の食べ過ぎには注意が必要です。柿に含まれる渋みのもとである「シブオール」と呼ばれるタンニン成分と、「アルコールデヒドロゲナーゼ」と呼ばれる酵素は、アルコールの分解に働きかけるため二日酔いに効果的です。さらに、柿は葉やヘタの部分にも薬効があり、葉には果実以上にビタミンCが多く含まれています。柿の葉で作ったお茶は、​高血圧や動脈硬化予防のほか、潰瘍などによる内出血や痔の出血、鼻血、月経過多、眼底出血にも効果があるといわれています。さらに漢方では、ヘタの部分にしゃっくり止めや夜尿症に効果があるとされています。

柿の効果

コレステロール値を下げる効果
柿に含まれるポリフェノールの一種タンニンは、血中の悪玉コレステロールを減少させ、血液をきれいにする働きがあります。血液の悪玉コレステロールが増加すると、血管の内壁が脂質で分厚くなり、こぶのようにせり出して血管を狭め高血圧を引き起こしやすくなるため、動脈硬化や脳卒中の原因となってしまいます。タンニンが豊富に含まれる柿には動脈硬化を予防し、高血圧を防いでくれる効果が期待できます。また、血液の流れがスムーズになると栄養や酸素が体のすみずみまで素早く行き渡り、老廃物が取り除かれます。すると、新陳代謝が促進され、体全体が活性化されるため、様々な不調の改善につながります。

免疫力を高める効果
柿にはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球、特に好中球に多量に含まれており、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する役割を担っています。ビタミンCは、白血球の働きを高め、ビタミンC自らも細菌やウイルスに攻撃を仕掛ける力を持っています。また強い抗酸化作用を持つカロテンも豊富に含んでいるため、ビタミンCとの相乗効果で免疫力をさらに高め、風邪などの病気予防に効果的です。

美肌効果
柿に豊富に含まれるビタミンCには、シミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果があります。日光に当たり続けると、紫外線の刺激を受けてチロシンと呼ばれるアミノ酸から皮膚の色素細胞であるメラニン色素が生成されます。このメラニン色素が皮膚に沈着することで、シミ・そばかすができます。ビタミンCは、チロシンからメラニンをつくりだすチロシナーゼという酵素の働きを抑制し、メラニン色素の沈着を防ぐことで、シミ・そばかすを予防します。

腸内環境を整える効果
干し柿には非常に多くの食物繊維が含まれており、有害物質の排泄や栄養素の吸収、腸内環境の正常化に働きかけます。
​糖尿病や高脂血症、便秘解消、生活習慣病予防に効果的です。

二日酔いを防ぐ効果
柿に含まれる渋みのもとであるシブオールと酵素であるアルコールデヒドロゲナーゼにはアルコールを分解する働きがあります。さらに柿には利尿作用を持つカリウムが多く含まれるため、二日酔いの予防に効果的です。

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※参考文献一覧
薬膳と漢方の食材小事典
2019、日本文芸社 p118
わかさの秘密
https://himitsu.wakasa.jp/contents/persimmon/

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