ゴボウ 【牛蒡】
【効き目】
腹痛、下痢、便秘の解消、貧血、冷え性の改善など
ゴボウを食べるのは世界でも日本や韓国、台湾だけど言われてる。日本人は生活の中でかなり工夫して大事なものとして食べてきました。昔は医者がいない無医村が多かったから、お腹が痛くなるとゴボウを掘ってきて皮ごとすりおろし、その汁を盃で一杯飲む。すると痛みが止まり治ってしまいました。痰が出るのも、このしぼり汁を飲むと治ります。タンパク質偏重の現代栄養学尺度では「ゴボウの主成分のイヌリンには栄養価値がない。ミネラル、ビタミンにもみるべきものはない」などと言われながらもゴボウは健在です。それは生理学的に不可欠の要素があるからでしょう。ゴボウの繊維は腸壁を刺激して消化を助け、またイヌリンは腸内の有効菌を育てるので便秘の薬にもなります。また利尿や腎臓の働きを助ける。また、ゴボウは鉄分が多いので貧血防止や冷え性の防止にも役立ちます。
ごぼうの歴史
ごぼうは縄文時代に中国から日本に伝わったといわれています。日本現存最古の薬物辞典である平安時代の「本草和名(ほんぞうわみょう)」に、キタキス、ウマフブキの名で記録されています。中国では、解毒、解熱、鎮咳などの治療にごぼうが使われていたため、日本でもしばらくは中国と同じく薬用としてのみ用いられていました。しかし宮廷料理の献立にごぼうが用いられたとの記載があることから、平安時代後期には食用とされていたようです。ごぼうは日本人にとって非常に身近な根菜ですが、日本に自生種はなく、中国から渡来したごぼうが広まったと考えられています。
ごぼうの品種
ごぼうは、根の長さによって長根種と短根種に分類されます。長根種は根の長さが70~100cm程で、土がやわらかい関東地方で多く栽培されています。一般的に多く出回っているのは長根種の代表的な品種である滝野川ごぼうです。東京都北区滝野川地域で多く栽培されていたことから「滝野川ごぼう」と名づけられたといわれています。一方、短根種は根の長さが30~50cm程で、土が硬い西日本で栽培されていることが多い種類です。短根種には、堀川ごぼう、大浦ごぼう、新ごぼうなどがあります。
・堀川ごぼう
堀川ごぼうは京都の伝統野菜のひとつであり、長さ50cm前後、直径6~8cmの短くて太いごぼうです。栽培途中に横向きに植え替えるという独特の方法によって、太いごぼうに育ちます。堀川ごぼうは、先端がタコの足のように枝分かれしており、中心部に空洞があることが特徴です。
・大浦ごぼう
大浦ごぼうは千葉県匝瑳市大浦地区の特産品であり、長さ60cm程度、直径10cm前後のごぼうです。日本では、江戸時代以前から栽培されています。
・新ごぼう
新ごぼうは、主に九州地方で栽培されている長さ30cm程の色が白く、細いごぼうです。4月~6月頃に旬を迎えます。
葉が食用とされる葉ごぼうや西洋ごぼうとも呼ばれているヨーロッパ原産のサルシフィなどの品種もあります。
ごぼうの生産地
ごぼうの主な生産地は、青森県、埼玉県、茨城県、北海道で、11月~1月に旬を迎えます。新ごぼうは、6月~7月が美味しい時期だといわれています。
ごぼうの見分け方
ごぼうは握った時に弾力があり、ずっしりとしているものが良品です。表面にひび割れや黒ずみがあるものや先端がしおれているものは避け、太さがある程度均一で、先端に向かって細くなっているごぼうを選びます。堀川ごぼうや大浦ごぼうを除き、軽すぎるごぼうや太すぎるごぼうは鮮度が落ちて中にス(空洞)が入っている場合があります。また、土つきでひげ根が少ないものの方が風味や香りが良く、新鮮なため日持ちがします。
ごぼうの調理方法
ごぼうは煮物や揚げ物、炒め物などに幅広く使用されています。皮の部分にはごぼうの風味や香りが多く含まれているため、ごぼうを調理する場合は皮はむかず、タワシや包丁の背を使って表面の泥を軽くこそぐ程度にします。強くこそいで、ごぼう独特のうまみをとりすぎないようにすることが大切です。ごぼうはアクが強く、空気に触れると黒っぽく変色するため切ったらすぐに5分程水につけて変色を防ぎます。ごぼうを長時間水にさらすと、ごぼうに含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が流出し水が黒っぽくなると同時に、ごぼうの風味や香りが流れ出てしまうため注意が必要です。堀川ごぼうや大浦ごぼうなどの太いごぼうはアクが強いため10分程度水にさらすことをおすすめします。アクが少ない新ごぼうは、さっと水で流す程度で十分です。たたきごぼうやサラダのように見た目をより白く仕上げたい場合は、酢水にさらします。ただし、酢水に15分以上つけるとごぼうが硬くなり、風味が損なわれてしまうため注意が必要です。油を使う料理の場合は油によってアクが抑えられるため、アク抜きは必要ありません。
ごぼうの保存方法
ごぼうは乾燥に弱いため、土つきのごぼうは日の当たらない風通しが良い場所で保存します。切らずに保存する場合は新聞紙に包み、切っている場合は紙袋に入れて保存します。傷みやすい夏場はごぼうを適当な長さに切って水にさらし、ラップに包んで冷蔵庫の野菜室に入れると安心です。土つきのごぼうは1週間程度、洗ったごぼうは2~3日程度で使いきるようにします。ごぼうの量が多く使い切れない場合は、ささがきにしたものを軽く茹で、しっかりと水気を切り保存用袋などに入れて冷凍すると長持ちします。
ごぼうに含まれる成分と性質
ごぼうには、非常に多くの食物繊維が含まれています。食物繊維とは、消化酵素で消化されない成分で、五大栄養素に次いで第六の栄養素と呼ばれています。ごぼうには、不溶性食物繊であるセルロースとリグニン、水溶性食物繊維であるイヌリンが含まれています。不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は異なる性質と働きを持ちます。不溶性食物繊維は、水に溶けない性質を持ち、大腸で水分を吸収し数倍から十数倍に膨らみ便のかさを増やすとともに、腸のぜん動運動を高めます。水溶性食物繊維は、水に溶ける性質を持ち、腸内で水分に溶け込みヌルヌルとしたゲル状となり、有害成分を吸着して排出させます。
ゴボウの効果
腸内環境を整える効果
ゴボウに含まれている不溶性食物繊維のセルロースとリグニンには腸内の善玉菌を増やす働きがあるため、腸内環境を整えることが期待できます。口から入った食物はまず胃で消化され、次に腸で吸収された後、その栄養素は血液にのって全身へと行き渡ります。腸内環境が乱れていると、本来排出されるべきものまで吸収されてしまい、様々な体の不調や病気につながります。腸内には、悪玉菌、善玉菌と呼ばれる細菌が存在しており、これらの菌のバランスが腸内環境を左右しています。
腸内に悪玉菌が増殖すると、消化されていない物の腐敗が進み、腐敗物が吸収されてしまうため、血液やリンパ液が汚れ免疫力が低下します。一方、善玉菌が増殖すると、便通が良くなり栄養の吸収率が高まります。その結果、免疫力が向上し病気にかかりにくくなります。また、血液の質も高くなるため肌もきれいになります。
便秘を解消する効果
便秘とは、便が1週間近く排出されない状態のことをいいます。便秘は慢性的なものですが、腹痛や頭痛、食欲不振などの症状が現れることもあります。ゴボウに含まれる不溶性食物繊維のセルロースとリグニンは、腸内で水分を吸収して膨らみ、腸管を刺激して腸のぜん動運動を高め、便の排出を促します。
動脈硬化を予防する効果
ゴボウに含まれる不溶性食物繊維のリグニンには、動脈硬化や高血圧を予防する効果があります。動脈硬化とは、血管の動脈が弾力性や柔軟性を失った状態をいい、進行すると血管の中にコレステロールが溜まり、血液がスムーズに流れなくなります。不溶性食物繊維は、肝臓でつくられるコレステロールの材料である胆汁酸を吸着して排出する重要な働きを持っています。胆汁酸の排出はコレステロールの減少につながるため、動脈硬化の予防が期待できます。イヌリンにはナトリウムを排出する働きもあるため、高血圧の予防にも効果的です。
抗炎症作用
ゴボウに含まれる有効成分アクチゲニンは免疫細胞にはたらきかけ、アレルギー・炎症関連物質 IL-4 、IL-5、IL-6の分泌を抑制し、抗炎症作用および抗アレルギー作用を示します。
糖尿病を予防する効果
ゴボウには、糖尿病を予防する効果が期待できます。
糖尿病とは、すい臓から分泌されるホルモンの一種であるインスリンが正常に働かなくなることで血糖値が上昇する病気です。インスリンには、血糖値の上昇を抑える働きがあります。血糖値が上がると、神経や内臓に悪影響が出ます。ゴボウに含まれている水溶性食物繊維のイヌリンは、摂取した食物と混ざり合いヌルヌルとしたゲル状となって小腸までゆっくり進みます。そのため、栄養素の吸収に時間がかかることで血糖値の上昇が緩やかになり、糖尿病の予防に期待ができるといわれています。また近年、ゴボウの有効成分アクチゲニンが筋肉へのグルコースの取り込みを促進することで糖尿病予防に役立つとの研究も報告されています。
老化を防ぐ効果
ゴボウの皮には、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やタンニンが含まれています。ポリフェノールとは、食物の色素や苦み成分に含まれ、強い抗酸化作用を持っていることで知られている成分です。クロロゲン酸やタンニンには、活性酸素によって生成される病気や老化の原因である過酸化脂質の発生を抑える働きがあるため、老化を防止する効果が期待できます。またゴボウの有効成分アクチゲニンに、老化に伴う記憶障害を抑制するはたらきも報告されています。
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※参考文献一覧
東城百合子、野草と野菜、三笠書房、2019、p88
わかさの秘密
https://himitsu.wakasa.jp/contents/gobou/